〈インタビュー〉KIZUNA 長船亜由美 副社長執行役員

2019.10.31 日本流通産業新聞

 通販事業のワンストップ支援を行うKIZUNA(本社福岡県、松永高徳社長、(電)092―557―1180)は、コールセンター事業にも強みを持つ。顧客とのコミュニケーションを重視するセンター運営を行っており、解約阻止率が4倍増するケースや、定期への引上げ率が3倍増になるケースも出てきているという。長船亜由美副社長執行役員に、コールセンター運営について話を聞いた。

■解約阻止率4倍増も


 ─直近の業績について聞きたい。
 19年4月期の売上高は会社設立以来、初めて10億円を突破した。当社では15~19年度の5年間は、売上高の拡大に重点を置いていたが、20年度以降は、利益率の向上に重きを置くようにしている。

 ─コールセンター事業の近況は。
 コールセンター開設5年で30社近いクライアントさまが安定稼働している。通販業界の市場成長に合わせて当社も業績を拡大させていただいており、第二センターを福岡県久留米市に11月からオープンするほどの盛況となっている。

 ─貴社のコールセンター事業の特徴は。
 当社のコールセンターには、薬剤師と登録販売者が在籍しており、医薬品通販の受電業務に対応できるというのが一つの特徴だ。薬剤師が、医薬品に関する正しい情報を、お客さまに提供できるような体制を整えている。医薬品通販のコールセンター支援については、今後も取り組みを強化していきたいと考えている。

 ─コールセンター事業の強みは。
 当社のコールセンター事業の最大の強みは、「お客さまのファン化力」「KPI達成力」「低離職率」の3点に集約される。
 ─貴社では、コールセンター事業においても、コミュニケーターが自由に使える「感動予算」を設けるなどユニークな取り組みを行っていたが。
 当社では、「サンタの感動創造工場」を社風として掲げており、「感動予算」の取り組みも引き続き行っている。各コミュニケーターに一定額の「感動予算枠」を提供。電話の向こうのお客さまに?感動?してもらうためならば、コミュニケーターの裁量で自由に予算を使えるようにしている。一人一人のスタッフに予算・権限を与えることが、各コミュニケーターの責任感の向上にもつながっている。LTVの向上といったKPIの達成にも、こうした施策が貢献していると考えている。

 ─貴社のコールセンターサービスによって、通販企業は具体的に、どのような成果が得られているか。
 例えば、ある美容対策の医薬品を扱う通販企業では、当社が定期解約の阻止の取り組みをお手伝いした結果、解約阻止率が従来の5%から、一気に4倍の20%に高まった。シャンプーなどの美容トイレタリーを扱う通販企業では、16.6%だった定期の解約阻止率が、35.6%に高まった。
 定期引上げについても実績を重ねている。美容サプリ通販のある企業をお手伝いしたときは、32.9%だった、定期への引上げ率が3倍近い91.4%まで高まった。

 ─なぜそのような実績を挙げられるのか。
 いろいろな要因があるとは思うが、コミュニケーターの教育を充実させていることも要因の一つだと考えている。当社では、「ベンチマーク作業」を通して、徹底的に競合商品との相違点を把握した上での着台を実施している。他社のコールセンターでは、同様の実例はないのではないかと自負している。また、どのような背景で商品を開発したのかを含め、商品のストーリー性なども、しっかりと頭に入れてもらうようにしている。

 ─コールセンターの世界にもデジタル化の波が押し寄せているが、貴社の取り組みは。
 当社としては、AIチャットといったデジタルツールの活用といったところは、まだ十分に進んでいない。当社としてはこれまで、「人間だからできる」ところを追求してきた部分がある。そのノウハウを生かし、当社コミュニケーターが対応しているかのような、独自のチャットボット開発も視野に入れるなど、デジタル時代への対応も図っていきたい。

 ─コールセンター業界の人材不足への対応は。
 おかげさまで、当社では、求人応募倍率が6倍を突破するなど、人材不足にはなっていない。これまで女性やママ層が働きやすい社風を構築してきたことが、功を奏している。


■業務の垣根越え


 ─今後の展望について聞きたい。
 当社は、事業設計からプロモーション、フルフィルメント、CRMまで、通販企業のさまざまな業務を、ワンストップで総合支援できる企業だ。マーケティングの難しさまで含めて理解している当社の最大の魅力は「事業改善スピード」にあると考えている。業務別の専業会社ではなく、一括で業務を代行させていただいている当社だからこそ見える「課題」を先回りして解決することができる。各業務の垣根を越えた、お客さまに真に役立つ、ワンストップの支援を提供していきたい。

出典:日本流通産業新聞 令和元年10月31日記事より抜粋 <許諾済>
出典:日本流通産業新聞
令和元年10月31日記事より抜粋<許諾済>